「本当の」というのは奇妙な言葉

海に「その海の本当の色」なんてないし、
空にも「あの空の本当の色」なんてない。
鏡にも「この鏡の本当の色」などないし、
紅葉する葉にしても、
どの季節の葉の色が
「その葉の本当の色」と言えるわけでもない。
ならば、人間においても、
「その人の本当の姿」などないのでは。
「本当の」というのは奇妙な言葉だ。
不毛なのに、しばしば人はそれに執着する。
私たちは「本当のあの人」を知らず、
「本当の自分」も知らない。
そもそも「本当の」がないのだ。
だが、「本当の」という発想を抜きにして、
どこまで私たちは生きられるだろうか。







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