写真というのは、その場所における一つの瞬間の記録であって、同じ「瞬間」は未来永劫、二度とおとずれない。
私たちにとっての「今日」という一日は、もう二度とない一日であるのと同様に、なんでもない写真に見えても、その瞬間の空の色とか、人の姿とか、影の具合とかは、もう二度と同じものを撮ることはできない。
あらゆる瞬間は希少であるはずなのに、私たちは未来永劫二度とないそれぞれの瞬間の希少さに鈍感である。もし本当に優しい神様がいらっしゃったら、人間の目にはどんなにつまらない写真でも「素晴らしい」とおっしゃるだろう。
なぜなら、その瞬間瞬間のかけがえのなさを知っていることが、優しい、ということだからである。