学生の邪魔をしないこと

人は人を誤解しないことなどありえない。

これまで「学生に何かを教えること」が仕事だと思い込んでいた。だが最近、意識すべきなのは実は「教えること」ではなく、むしろ「学生の邪魔をしないこと」かもしれないと思うようになった。

学生には、彼らなりの好奇心がある。私にはない感性があり、私にはない希望があり、不安があり、それなりに未来予測をして生きている。それを、古い私の「勉強」でもって邪魔をしてはいけない。

大学で長いこと働き、いつのまにか、学生たちと年齢がすっかり離れてしまった。だから、彼らに対しては、何を言うかではなく、余計なことを言わないことの方が、大事になってきたのだ。

言いたいことがあっても、なるべく我慢しよう。我慢して、我慢して、それでもどうしても言わずにいられないことだけ、伝えるようにしよう。

人文系の世界は、「学問」というよりも「作法」に近い。教えるべきことはもちろんあって、それらは教えねばならないが、それらよりも重要なのは、学生が自ら経験する、感動や、感銘や、苦悩や、恥辱である。それらを受け入れようとしたり、克服しようとしたりすれば、自然と研究に夢中になる。

私のゼミでは、毎年、大晦日が卒論の提出締め切りだ。
あと、もう10日もない。
今年も全員が、無事に書き上げられますように。








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