人間のみならず他のあらゆる動植物にも共通してあるとされる「命」という概念を、人類はいったいいつごろから使いこなすようになったのだろうか。
この世の美しさも醜さも、幸福も不幸も、不思議さも理不尽さも、究極的にはすべて「命」という概念の奇妙な抽象性とその恣意的な使い方に端を発しているような気もする。
「命」それ自体は、物質ではない。
では、何なのか。
「命って、つまり何ですか」と問われて、それに答えるのは意外と難しいであろう。
「命」は生物に関する概念だけれども、「重力」とか「酸素」などとは違って、どちらかというと「愛」とか「正義」などに近いタイプの概念ではないだろうか。
私たちは、実は「命」を知らないまま生きている可能性もある。